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社会と人間  征韓論

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社会と人間  征韓論



 征韓論は近代軍隊が成立した明治になってから流布したような気がするが、実は幕末期からその勢いは隆盛になってきた。一つにはアヘン戦争の実体を知った知識人が、欧米列強に対抗するその手段の必要性として。もう一つは尊王攘夷思想に結びついた国粋主義的思潮に連動してである。

 尊王思想に結びついたのは、主に国学から発生した復古神道の系統であった。本居宣長が大成した思想をさらに体系化し、それを一般に浸透させたのが平田篤胤の系統である。篤胤の没後、その門人は急速に増加し、藩のなかにはそれを藩学に採用するところまで現れた。
 平田派国学は復古主義、尊王主義の形をとり、その信奉者は下級武士、神職、地主、在郷商人等、各階級を超えてその影響力を広げた。篤胤の没後、門人は1330人にも達したという。

 国学がその影響力を持ったのには、「尊王」に結びつく天皇礼賛思想を含んでいたためである。さらに「攘夷」に結びつく、排外的な、自国礼賛の思想を含んでいた。
 その大元である宣長の記述にも、「(皇国が)万国に勝れたる所由」など、自国に対する、ほぼ根拠のない礼賛が散見する。このような記述は記紀の記述に根拠を置いているという論理なのだが、これが欧米列強を排除しようとする排外的な動きにつながり、国粋主義的な母体を築いていったのだった。

 このような国粋主義的運動は、大元の「外国」を指していた「中国的なもの」にも向けられている。その矢面に立たされたのが、「中国的教養」を意味した儒学、ならびに仏教だった。
 いわゆる廃仏毀釈の運動は、ここに由来している。それは明治新政府がいっせいに始めたことではなくて、津和野や薩摩では先立ってその動きが取り入れられた。特に薩摩では大政奉還の前々年である1865年には廃仏に着手し、明治ニ年には藩内の寺院を一つ残らず廃寺にした。

 このような国粋主義的風潮の中で、「日本のために韓国を征服すべき」という論理が盛んになる。その根拠はまたしても記紀で、そこに古代の日本が朝鮮半島を治めていた、というような記述があったというのがその論拠だ。
 またこの頃には、豊臣秀吉が朝鮮出兵したときの事が英雄譚のように書かれた物語が、広く民衆の間でも親しまれた。それは今で言えばマンガなどのサブカルチャーに値するものだが、広く民間でも「日本のために韓国を征服しよう」という発想が流布していたことを物語っている。

 ここに加えて朝鮮の大院君が鎖国政策をとり、日本の明治新政府の発足の書簡を受け取り拒否するという事件が起きる。朝鮮内部でもその鎖国政策は、意気が大いに上がっていた。
 この朝鮮の書簡拒否に、日本の対朝鮮感情が悪化することになる。国内の盛り上がりも受けて、ここから具体的に朝鮮半島に出兵する「征韓論」は具体化する。しかしその見解は、新政府内部でも意見が分かれていた。

 明治6年、「征韓論政変」と呼ばれる政府内部の対立で、多くの政界人が在野に下った。特に西郷の在野化、大久保の中央入りは特徴的な変化と言える。この時西郷は、自身を朝鮮への使者にする「遣韓論」を唱えていた。
 このときの西郷の心づもりは、かなりの覚悟であった。自身が使者として朝鮮へ行き、そこで殺害される。それを理由に日本は朝鮮へ派兵すればいいという、かなりとんでもない腹づもりでいたことが、その書簡に書かれていた。また大久保らは征韓論それ自体に反対していたのではなく、つまるところ派兵の時期に対して異論があっただけだったとも言われる。

 日本はその意味では、官も民も「征韓論」が隆盛していた。特にそれを唱えていたのは、身分制度の撤廃によって禄を失った不平士族となった武士達であり、その急進的で攻撃的な思想は急速に広まっていた。
 政府内部の征韓論政変が収束してすぐには派兵しないことが決まると、不平士族の運動はさらに高まる。1876(明治9)年に、神風連の乱と呼ばれる反乱が熊本で起きる。それに続いて福岡の士族が秋月の乱を起こす。

 この二つの乱は結局、新政府によって鎮圧された。しかしこの流れの最たるものとなったのが、西郷隆盛を頭に据えた西南戦争だった。この最終的な不平士族の反乱を鎮圧することにより、明治政府は一応の国内の安定をみることになる。
 しかし一方では、征韓論を唱えていた論者のなかには板垣退助のように、その後、自由民権運動に移行していった者も少なくない。人民の自由・権利を獲得・擁護するとはいえ、それはあくまで自国民に限った話だったと言える。
 
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