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武術散策  抑制力について

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武術散策  抑制力について



 山本KIDのよく流れた試合映像に、パウンドで昏倒している相手に対して何か喚きながら、なお殴ろうとしてセコンドやレフリーに止められてるものがあった。攻撃衝動が高まりすぎると抑えがきかず、勝負はとうについているのに爆発してしまうのである。

 考えてみよう、その制止が一瞬遅れために相手が脳挫傷で死亡、あるいは半身不随等の取り返しのつかない結果になったときの事を。無論、これは試合の上で起きた「事故」であって、KIDには責任は生じないかもしれない(制止を振り切って与えたダメージが致命傷だったら微妙だが)。
 しかし法律上の責任は生じないとしても、そこには何の「罪」も発生しないだろうか。これはひとえに、KIDという人間の資質に関わるだろう。「試合の上で死んだのだから、オレは悪くない」と割り切れるのなら、心理的負荷はそれまでである。

 しかし例えばその被害者の家族はその理屈を納得するだろうか? 意識を失ってるところになお喚き声を上げながら殴る相手を、「あれは試合上の事故だ」と割り切れるだろうか。「逆恨み」のようなものであれ、相手の家族や関係者が復讐をしようと考える自由はKIDには止められない。
 復讐それ自体は別段、手段を選ばない。李書文のように毒殺されるかもしれないし、拳銃や自動車を使うことだって充分ありえるのだ。そもそも日本刀やナイフを持ってきた場合ですら、武器術をやらない総合格闘技がそれに対応するのはかなり難しい。

 別段、山本KIDを責めてるわけではなく、ただそのような存在の仕方は「非武術的だ」という話をしているのである。KIDはプロ格闘家であり、人気がなければいけない職業なのだ。観客はエキサイティングに、攻撃衝動が全開になった人間を見たがっている。他にも総合格闘家は沢山いるにも関わらず、KIDが人気選手になったのはその攻撃衝動が全開になる姿が見られるからだ。
 しかし武術家というのは、格闘家とは根本的に目的をことにする。武術家がまず考えなければならないのは「護身」ということであり、エキサイティングに相手をぶちのめす事ではない。

 手段を選ぶという事を考えなければ、はっきり言って「人を殺すのに技術はいらない」。よく「武術は殺人の技術」などと言われるが、大きな勘違いである。人は素人の暴力でもあっさり死ぬ。ミステリーでは素人が、何人も殺人も犯している。
 むしろ武術が必要なのは「護身」においてなのである。不意の攻撃に対する所作、反応力、防御する力。そして何より、自らにそのような災いを招かぬこと。

 「護身」という事を第一に考えるのなら戦う技術だけではなく、そこには「人から恨まれない」という人格生成の場が入らなければならない。人格、つまり「武徳」を磨くというのは、極めて「現実的な」護身の戦術なのである。
 このことを考えてみたときに、初めて過去の剣豪たちが戦いを避けることが最終的な境地になっていった理由が判る。また御殿手の教えの意味がそこに鮮やかに立ち上がる。

 『自分から敵を作ることはするな。一つ勝ったら一つは負け、右で勝ったら左で負けることが大切である』

 ここにはただ相手に勝つことが武術の目的なのではない、という透徹した認識がある。最終的には武術というのは、「生き方」そのものであるのだ。
 ここに「勝つ」ことだけが目的となる格闘技と、生き方である「武術」との違いがある。武術的には相手やその周辺から恨みを買うような「勝利」は、むしろ敗北であるとすら言える。

 そのように考えたとき、そもそも「他人」に止められなければ、自分の攻撃衝動が抑制できないということ自体が、非武術的なのだということが判る。攻撃衝動を全開にし、それを周りが抑え込む。こういうのは「武術」ではない。
 当然ながら、顎が砕けてる相手を気遣うでもなく、「オレ、ちょーカッコイイ」と言えるメンタリティも非武術的である。そこには相手に対する気遣いも、またそのような自己顕示的発言がもたらす波及に対する考慮もない。それは簡単に言えば、山本KIDが武術家ではないという事である。

 その意味では、勝ってなお相手を気遣う田村潔司のような選手は、極限まで格闘技をスポーツライクに捉えた先に、何故か武術に通じる道を見つけたといってもいい。
 武術においては戦いの場においても、普段においても抑制力を持つことが極めて重要である。無論、時には爆発力も必要だ。しかしそれはコントロール化にあるものでなければならない。

 そのような事を考えるとき、全くそれとは対照的な山本KIDのような選手が格闘家として人気だということに、若干の不満と不安を感じる。
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